介護の現場で働いていると、「何もしなくても、ただ安心できる時間」が、どれほど人の心を支えてくれるかを実感する瞬間があります。言葉をかけても届かない日、何をしても不安が消えない時間。そんなとき、そっと寄り添ってくれるのが、やさしい音でした。
この演奏会は、にぎやかなコンサートでも、特別な知識が必要な音楽会でもありません。介護職として日々高齢の方やご家族と向き合う中で、「こんな時間があったらいいな」と思い描いてきた、心がほどけるひとときを形にしたものです。
ご本人はもちろん、そばで支えるご家族にとっても、少し肩の力を抜ける時間になりますように。そんな思いを込めて、このアイリッシュハープ演奏会をお届けします。
なぜ「アイリッシュハープ」なのか(ご家族の方へ)

ご家族として一緒にお出かけを考えるとき、
「音が大きすぎないかな」
「途中で疲れてしまわないかな」
そんな心配が、どうしても頭をよぎると思います。
今回の演奏会で、あえてアイリッシュハープを選んだのは、高齢の方にとっても、ご家族にとっても、安心して過ごしやすい音楽だからです。
アイリッシュハープは、静かで、やさしく、空間に溶け込むような音色が特徴です。無理に「聴こう」としなくても、自然と耳に届くため、気持ちを張り詰める必要がありません。
ご家族がそばで見守りながら、無理をさせずに一緒の時間を過ごせる――そんな安心感を大切にしています。
音がやさしく、耳に負担がかかりにくい
ご家族を連れての外出で、意外と大きなポイントになるのが「音の刺激」です。特に高齢の方の場合、音量そのものだけでなく、音の急な変化や重なりが、思っている以上に疲労や不安につながることがあります。
アイリッシュハープは、そうした刺激がとても少ない楽器です。
- 突然大きな音が鳴らない
- 高音が少なく、耳に刺さる感じがない
- 音の立ち上がりが穏やかで、空気になじみやすい
- 補聴器を使用している方でも比較的聴きやすい
音に驚いてしまう心配が少ないため、「途中で不安になってしまうかも」「落ち着かなくなったらどうしよう」といった場面が起こりにくくなります。その結果、ご本人だけでなく、そばで見守るご家族の緊張も自然と和らぎ、落ち着いて同じ時間を過ごしやすくなります。
昔の記憶や感情に、静かに寄り添う音
アイリッシュハープの音色には、言葉を使わずに心に触れる力があります。説明や理解を必要としないため、「分かっているかどうか」を気にする必要がありません。
- 曲の意味が分からなくても大丈夫
- どこか懐かしさや安心感を覚える方が多い
- 昔の記憶や感情に、そっと触れるような感覚がある
- 認知症のある方でも穏やかに耳を傾けてくれることが多い
「ちゃんと理解できているか」「楽しめているか」を常に確認し続けなくても、音そのものが自然に寄り添ってくれる――そんな時間が生まれやすいのが、この音楽の特徴です。ご家族にとっても、見守りながら心を休めやすい、穏やかなひとときになります。
介護職として、家族の立場に寄り添いたいと思った瞬間

主催者である私は、日頃、介護職として働いています。その中で強く感じるのは、ご家族が無意識のうちに気を張り続けているということです。
介護をしていると、どうしても「本人のために何かしてあげなければ」「楽しませてあげなければ」という思いが先に立ってしまいます。外出ひとつ取っても、段取りや体調、周囲への配慮など、考えることが多く、ご家族の心は休まる暇がありません。
「ちゃんと楽しませなきゃ」「迷惑をかけないようにしなきゃ」――そんな思いを抱えながら外出している方を、これまでたくさん見てきました。その姿は、とてもまじめで、やさしくて、同時にとても疲れているようにも見えました。
何もしなくていい時間が、いちばん助けになることもある
介護の現場では、声かけや働きかけが、かえって負担になってしまうこともあります。良かれと思って行動したことが、結果的にご本人を疲れさせてしまう――そんな場面も、決して少なくありません。
言葉には反応しなかった方が、静かな音楽が流れた途端に、ふっと表情を緩めた場面を、私は何度も目にしてきました。こちらが何かをしようとしなくても、音だけが、自然にその人の心に届いたように感じられた瞬間です。
そのとき、そばにいたご家族が「何かしなくてもいいんですね」と、少し肩の力が抜けたように話してくれたことがありました。音楽が助けてくれたのは、ご本人だけでなく、ずっと気を張っていたご家族の心だったのかもしれません。
「楽しませる」より「安心して一緒にいられること」
この演奏会では、盛り上げることや反応を求めることを目的にしていません。拍手や笑顔といった“分かりやすい反応”がなくても、それで十分だと考えています。
- 拍手をしなくても大丈夫
- 途中で席を立っても大丈夫
- 眠ってしまっても大丈夫
「ちゃんと参加しなきゃ」「最後までいなきゃ」といったプレッシャーがないからこそ、ご本人も、ご家族も安心して同じ時間を共有できます。ただ隣に座って、同じ音を聴いている――それだけで意味のある時間になるような、そんな空間を目指しています。
演奏者について|ご家族が安心できる理由

今回演奏してくださるアイリッシュハープ奏者は、私の知人です。だからこそ、演奏の上手さや経歴以上に、「どんな人か」「安心して任せられるか」を何より大切にしました。
介護の現場では、ほんの少しの気遣いや空気の読み方が、相手の安心感を大きく左右します。今回お願いした演奏者は、そうした繊細な感覚を自然に持っている方です。技術を見せるよりも、その場にいる人の状態を感じ取り、音を通してそっと寄り添うことを大切にされています。
場の空気を大切にする演奏
- 聴いている方の表情やしぐさを見ながら演奏する
- 無理に音を重ねず、静かな時間も音楽の一部として扱う
- 音と音の間にある「間(ま)」を丁寧に大切にする
決められたプログラムを淡々とこなすのではなく、その場に流れる空気や、聴いている方の様子に合わせて音を選んでいく演奏スタイルです。だからこそ、「今、この時間に合った音」が自然に生まれ、無理のない心地よさにつながっていきます。
高齢者とご家族、両方への配慮
- 演奏時間が長くなりすぎないよう配慮する
- 体調や会場環境に合わせて音量を細かく調整する
- 会場の雰囲気や人の動きに合わせて進行を変える
ご本人が安心して過ごせることはもちろん、付き添うご家族が「周囲に気を遣いすぎなくていい」状態をつくることも大切にしています。演奏が進むほど、ご家族の表情も自然とやわらいでいく――そんな空気を一緒につくってくれる演奏者です。
こんなご家族におすすめです

この演奏会は、「特別な音楽好きの方」や「元気に外出できる方」だけのものではありません。むしろ、日々の生活の中で、少しだけ気を張りながら過ごしているご家族にこそ、知っていただきたい時間です。
- 親を外に連れ出したいけれど、体調や気分が心配で踏み出せない
- 大きな音や人混みはできるだけ避けたいと思っている
- 「せっかく連れて行くなら楽しませなきゃ」と思うことに、少し疲れてしまった
- 介護の合間に、短い時間でも穏やかな空気を一緒に感じたい
- 会話や説明がなくても、同じ場所で静かに過ごせる場所を探している
「ちゃんとしたイベントに参加する」というよりも、
安心できる空間に、ふらっと立ち寄るような感覚で考えていただけたら嬉しいです。
無理に感想を聞いたり、反応を確かめたりする必要はありません。ただ隣に座り、同じ音を聴いているだけでも、その時間は十分に意味のあるものになります。
イベントというより、安心できる時間を一緒に過ごす場所。
そんなふうに受け取っていただけたら、私たちはとても嬉しく思います。
イベント詳細・参加方法(ご家族向け)

この演奏会は、「最後まで座っていなければいけない場」ではありません。
音楽を聴く姿勢や過ごし方に、決まりごとはありません。途中で席を立っても、静かに目を閉じて聴いても、体調を優先して早めに帰っても大丈夫です。「せっかく来たから最後までいなきゃ」と無理をする必要は、まったくありません。
その日の体調や気分によって、感じ方は変わるものです。少し音に耳を傾けてみて、「今日はここまでかな」と思ったら、それで十分です。その判断を、ご家族が気にする必要も、周囲に遠慮する必要もありません。
ご家族もどうか無理をなさらず、「行けそうな日」「行けそうな気分」のときに、気軽にお越しください。外出できたこと自体が、すでに大切な一歩です。
開催概要
- 日時:2026年2月12日(木)
- 開演:14:00(開場 13:30)
- 会場:豊川市小坂井文化会館(フロイデンホール)
- 主催:さわやか音楽会実行委員会・豊川市
- 入場料:500円
- 出演者:田中左京、畔柳美佐子
過去イベント

📍 所在地(住所)
豊川市小坂井文化会館(フロイデンホール)
〒441-0105
愛知県豊川市伊奈町新屋97-2
電話:0533-78-3000
ファックス:0533-78-3553
駐車場案内は↓こちら
電車、自動車でのアクセス案内

前売り券について
- 前売り券発売開始:2025年12月14日(日)
- 前売り特典:お菓子付き
当日券もご用意していますが、前売り券は数量に限りがあります。ご予定が決まり次第、早めのご購入をおすすめします。
まとめ|ご家族へ

介護の現場で感じてきたことがあります。それは、ご家族が少し安心すると、ご本人も穏やかになるということです。ご本人の状態や表情は、そばにいるご家族の気持ちと、思っている以上に深くつながっています。
「ちゃんとしなきゃ」「迷惑をかけないようにしなきゃ」――そうした思いで気を張り続けていると、ご本人にもその緊張が自然と伝わってしまうことがあります。反対に、ご家族が少し肩の力を抜けたとき、空気がやわらぎ、ご本人の表情も穏やかに変わっていく場面を、私は何度も見てきました。
音楽が、そのきっかけのひとつになれたら。言葉を交わさなくても、何かをしなくても、ただ同じ音を聴いているだけで、心が少しほどける――そんな時間を届けたいという思いで、この演奏会を企画しました。
「今日は行けてよかった」「少し外の空気を感じられた」そんな小さな実感が積み重なっていくこと自体が、とても大切な意味を持っています。
この時間が、「連れて行ってよかった」と心から思えるひとときになれば、そしてご家族にとっても、ほんの少し心を休められる時間になれば、これ以上嬉しいことはありません。
noteでも色々と書いています。




